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いらない相続土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」とは?費用・条件・手続きを司法書士が徹底解説

2026.09.04

「親から相続した田舎の土地。使う予定もなく、売ろうにも買い手がつかない。それでも固定資産税と草刈りなどの管理だけは毎年発生する——」。こうした“いらない土地”の悩みに正面から向き合うために、2023年(令和5年)4月にスタートしたのが相続土地国庫帰属制度です。一定の要件を満たせば、相続した土地を手放して国に引き取ってもらうことができます。

※土地の固定資産税には免税点があり、原則として同一市町村内に所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満の場合には課税されません。なお、大阪市では同一区内の土地を単位として判定されます。固定資産税が課税されない場合でも、土地の状況によっては草刈りなどの管理や近隣への対応が必要になることがあります。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、費用もかかります。本記事では、制度の対象になる土地・ならない土地、審査手数料と負担金の目安、申請の流れ、そして「相続放棄」との違いや、そもそも国庫帰属が最適なのかという比較の視点まで、司法書士が具体例を交えて解説します。

相続土地国庫帰属制度とは(2023年4月開始の背景)

日本では、相続しても登記や活用がされず、所有者と連絡が取れない「所有者不明土地」や、管理されずに放置される土地が全国的に増え、社会問題となってきました。こうした土地の発生を抑えるために設けられたのが相続土地国庫帰属制度です。

本制度の対象となるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した方です。そのため、売買や生前贈与など、相続等以外の原因だけで取得した土地は原則として対象になりません。

ただし、共有名義の土地については例外があります。共有者の中に相続や遺贈によって持分を取得した人がいる場合には、売買や生前贈与などによって持分を取得した他の共有者も含めて、共有者全員で共同して申請することができます。なお、自分の共有持分だけを国に引き取ってもらうことはできません

引き取ってもらえる土地・もらえない土地の条件

制度には、そもそも申請ができない「却下要件」と、申請はできても承認されない「不承認要件」があります。あてはまる場合は利用できないため、事前の確認がとても重要です。

申請そのものができない土地(却下要件)

  • 建物が建っている土地(古家・小屋なども含む。取り壊しが前提)
  • 抵当権などの担保権や、地上権・賃借権などの使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地(通路、墓地、境内地、水道用地など)
  • 法令で定める基準を超える土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地

申請できても承認されない土地(不承認要件)

  • 一定の崖(勾配・高さが基準以上)があり、管理に過分な費用や労力がかかる土地
  • 土地の上に、工作物・車両・樹木など、土地の通常の管理・処分を妨げる有体物がある土地
  • 除去しなければならない地下埋設物(産業廃棄物、古い基礎など)がある土地
  • 隣地の所有者などと争訟によらなければ管理・使用できない土地
  • その他、通常の管理・処分に過分な費用または労力がかかる土地

要するに、「建物や撤去すべき有体物がなく、境界を現地で確認でき、近隣とトラブルがなく、管理に過大な手間がかからない土地」であれば、引き取ってもらえる可能性が高いということになります。

境界についての補足:「境界が明らかでない土地」は却下の対象ですが、これは現地で土地の範囲や隣地との境界を確認できる必要があるという意味で、測量や境界確認書の提出まで必須とされているわけではありません。境界標がない場合は、紅白ポールやプレートなどの目印の設置を求められることがあります。また、筆界が未定であることや地図がないことだけで直ちに却下されるわけではなく、申請後に問題が判明しても、審査完了までに状況を改善できる場合があります。

判定の順番

実際には、次の順で確認していきます。前の段階で問題がある場合は、申請前に解消できるかを確認したうえで、次の要件を検討します。

段階確認すること当てはまらないと
1 取得の原因相続または相続人への遺贈で取得した土地かそもそも制度の対象外です
2 却下要件建物がないか、担保権・使用収益権がないか、他人の利用が予定されていないか、基準を超える土壌汚染がないか、境界を現地で確認できるか申請そのものができません
3 不承認要件一定の崖がないか、樹木・工作物などの有体物がないか、地下埋設物がないか、隣地と争いがないか申請できても承認されません
4 費用審査手数料14,000円と、承認後の負担金を支払えるか売却など他の方法との比較になります

2と3の違いは重要です。 2にあたると申請自体ができませんが、3は申請して審査を受けたうえでの判断になります。審査手数料は不承認でも戻ってこないため、3に不安がある場合は事前の確認がとくに大切です。

かかる費用(審査手数料と負担金)

制度の利用には、大きく分けて2種類の費用がかかります。

① 審査手数料

申請時に、土地1筆あたり14,000円の審査手数料を、収入印紙で納めます。この手数料は、審査の結果が却下・不承認となっても返還されません。だからこそ、申請前の要件確認が費用面でも大切になります。

② 負担金

審査を通過して承認された後、国に土地を引き取ってもらうために負担金を納めます。これは、国が引き取った土地を管理していくための費用として、おおむね10年分の管理費相当額を負担する趣旨のものです。

土地の種類負担金の目安
原野・雑種地など面積にかかわらず原則20万円
宅地原則20万円。ただし、市街化区域・用途地域内などでは面積に応じて算定
田・畑(農地)原則20万円。ただし、市街化区域・用途地域内の農地、農用地区域内の農地、土地改良事業等の施行区域内の農地は面積に応じて算定
森林面積に応じて算定。750㎡以下の場合は「地積(㎡)×59円+21万円」を基準に算定

※負担金の土地種目は、登記簿上の地目だけでなく、土地の現況等を踏まえて判断されます。登記地目が山林でも必ず森林区分になるとは限りません。なお、負担金の算定に用いる面積は、現況の面積ではなく登記記録の地積が基準になります。最新の算定基準は法務省の公表値で必ず確認してください。

※土地改良区の区域内にある農地では、土地改良法に基づく賦課金などの金銭債務が問題となる場合があります。国庫帰属によって国がその債務を承継することになる土地は不承認要件に該当しますが、法務局の審査完了までにその債務を消滅させた場合には、この要件には該当しません。

森林は面積に応じて算定され、20万円を上回るのが通常です。750㎡以下の場合でも「地積(㎡)×59円+21万円」で算定されるため、20万円を上回ります(1,000円未満は切り捨て。100㎡なら215,000円、500㎡なら239,000円)。「田舎の農地・山林だから一律20万円」とは限らない点に注意が必要です。

実際に土地を手放すために必要となる費用は、審査手数料や負担金だけとは限りません。土地の状況によっては、建物の解体や残置物の撤去、境界の確認などに費用がかかる場合があります。一方、売却する場合にも、仲介手数料や測量費などの諸費用がかかることがあります。そのため、「国庫帰属制度を利用できるか」だけでなく、売却できる可能性やそれぞれに必要となる費用も比較したうえで、どの方法が現実的かを検討することが重要です。

申請から国庫帰属までの流れ

  1. 法務局への事前相談(任意・推奨):土地所在地を管轄する法務局・地方法務局(本局)では、予約制で事前相談を受け付けています。対面のほか、電話やウェブで相談することもできます。必須の手続ではありませんが、利用をおすすめします。
  2. 申請書・添付書類の提出:申請書に、位置図・写真・印鑑証明書などを添えて提出し、審査手数料を納めます。
  3. 書類審査・実地調査:法務局の担当官が要件を審査し、必要に応じて現地を調査します。
  4. 承認・負担金の通知:要件を満たすと承認され、負担金の額が通知されます。
  5. 負担金の納付負担金の通知が到達した日の翌日から30日以内に負担金を納めると、その時点で土地の所有権が国に移ります。期限内に納付しなかった場合には、承認の効力が失われます。

審査期間の目安として、大阪法務局・和歌山地方法務局では、相続土地国庫帰属制度の標準処理期間を8か月としています。ただし、土地の状況や実地調査、書類の補正などによって、それ以上の期間を要する場合があります。添付書類の準備や境界の確認に時間がかかることが多く、早めの着手がおすすめです。

制度が使えない場合の代替策(比較)

要件を満たさない、または費用面で見合わない場合は、ほかの方法も検討します。それぞれ一長一短があります。

方法特徴注意点
相続土地国庫帰属制度特定の土地だけを手放せる要件審査あり・費用がかかる
相続放棄負債の多い相続などで有効その土地だけでなく全財産を放棄/原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内
売却現金化できる買い手がつかない土地では困難
寄付手放せる可能性自治体・法人が受け取らないことも多い

特に混同されやすいのが「相続放棄」との違いです。相続放棄はプラスの財産も含めて一切相続できなくなるのに対し、国庫帰属制度はほかの財産は相続したうえで、いらない土地だけを手放せる点が大きく異なります。なお、相続放棄には、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月という期間制限があります。

国庫帰属制度を使える=使った方がよい、とは限りません

相続土地国庫帰属制度の要件を満たしていても、必ずしも国に引き取ってもらう方法が最適とは限りません。国庫帰属には審査手数料や負担金がかかり、土地の状況によっては建物の解体や残置物の撤去などに追加の費用がかかる場合があります。

一方、売却についても仲介手数料や測量費などの諸費用がかかる場合がありますが、それぞれに必要となる費用や売却できる可能性を比較した結果、売却の方が経済的に有利になる場合もあります。反対に、買い手が見つかりにくい山林や原野などでは、相続土地国庫帰属制度が有力な選択肢となることがあります。

そのため、「国庫帰属できるか」だけでなく、「この土地をどう処分するのが現実的か」という視点で比較することが大切です。売却の可能性を調べたい場合は、グループ会社の株式会社ARIA Partners(宅地建物取引業者)に相談することもできます(売却相談は任意です)。

司法書士に依頼するメリット

相続土地国庫帰属制度では、土地の状況によって細かな要件を確認する必要があり、そもそも「その土地をどう処分するのが現実的か」という判断が難しい場面が少なくありません。当法人では、主に次のようなサポートを行っています。

  • 国庫帰属制度を利用できそうな土地かどうかの事前確認(却下・不承認要件に該当しないか)
  • 国庫帰属制度の法的要件・費用の整理、売却可能性の査定等が必要な場合の宅地建物取引業者へのご案内
  • 承認申請書や添付書類の作成
  • 法務局への書類提出のサポート、司法書士が作成した書面についての補正対応
  • 必要に応じた相続登記の申請代理
  • 境界・測量等が必要な場合の土地家屋調査士との連携、税務が絡む場合の税理士との連携
  • 法務局から求められた場合等の、実地調査への同行・対応サポート

なお、相続土地国庫帰属制度の承認申請は、申請者本人または法定代理人が行う制度であり、司法書士が任意代理人として承認申請そのものを代理することはできません。ただし、申請書類の作成や使者としての提出など、申請に必要となる実務を幅広くサポートすることができます。

相続登記との関係(未登記でも申請できます)

相続登記が未了でも、国庫帰属の申請自体は可能です。ただし、相続登記には別途申請義務があるため、相続関係や登記の状況、期限などを確認し、必要に応じて並行して対応します。

よくあるご質問(Q&A)

Q. 農地や山林でも利用できますか?
A. 利用できる可能性があります。ただし、境界が現地で確認できない、崖がある、残置物があるなどの場合は要件を満たさないことがあります。また、森林や市街化区域・農用地区域等の農地は負担金が面積に応じて算定され、20万円を上回ることがあります。個別に確認が必要です。

Q. 建物が建っている土地はどうすればよいですか?
A. 建物があると申請できません。取り壊して更地にすることが前提となります。解体費用も含めて検討しましょう。

Q. 兄弟の共有名義になっている土地は?
A. 共有地は、共有者全員で共同して申請する必要があります。相続で持分を得た人がいれば、売買等で持分を得た共有者も一緒に申請できる場合があります。なお、自分の持分だけを引き取ってもらうことはできません。

Q. 共有名義の土地を3人で共同申請する場合、審査手数料も3人分かかりますか?
A. いいえ。審査手数料は申請者の人数ではなく、土地1筆につき14,000円です。共有者が複数いても、人数分に増えるわけではありません。ただし、複数の土地を申請する場合は、原則として筆数分の審査手数料が必要です。なお、隣接する一定の同種目の土地については、複数筆を一つの土地とみなして負担金を算定できる特例(相続土地国庫帰属法施行令6条)もあります。

Q. 国庫帰属と売却、どちらがよいか分かりません。
A. 土地の状態・立地・費用によって最適な方法は変わります。両方を比較して検討しますので、判断がつかない段階でご相談ください。

まとめ・ご相談

相続土地国庫帰属制度は、これまで「押し付け合い」になりがちだった“いらない土地”を、正式な手続きで手放せる画期的な制度です。一方で、要件は細かく、審査手数料は戻らず、負担金もかかり(特に森林は20万円を上回ります)、そもそも国庫帰属が最適とは限りません。

相続した土地をどうすればいいか、分からない段階からご相談ください

  • 使い道のない土地を相続し、固定資産税だけを払い続けている
  • 兄弟との共有になっており、自分の持分だけを手放せないか知りたい
  • 不動産会社に相談したが、買い手が見つからない
  • 自分の土地が国庫帰属制度の対象になるのか分からない
  • 国庫帰属と売却のどちらを選べばよいのか分からない

このような段階からご相談いただけます。

ARIAグループでは、司法書士法人が相続土地国庫帰属制度の申請書類の作成や相続登記などの法務サポートを行うほか、境界の調査・測量等が必要な場合には土地家屋調査士と連携して対応します。また、「国に費用を支払う前に売却できる可能性も調べたい」という場合には、ご希望に応じてグループ会社である株式会社ARIA Partners(宅地建物取引業者)へのご相談も可能です。ARIA Partnersへの売却相談の利用は任意です。

「国庫帰属制度を利用する」と決めている必要はありません。お客様の土地の状況やご希望を確認し、国庫帰属・売却など複数の選択肢を比較しながら、現実的な処分方法を一緒に検討します。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

司法書士法人ARIAグループ大阪オフィスは、大阪メトロ谷町線・都島駅4番出口から徒歩1分です。

ご相談は、和歌山オフィス(JR和歌山駅東口から徒歩13分・駐車場1台分)でも同じ内容をお受けしています。 土地が和歌山にある場合でも、お住まいやお仕事の都合で大阪のほうがご都合よければ、大阪オフィスでご相談いただけます。ご都合のよい拠点をお選びください。

遠方にお住まいの場合は、郵送やオンライン面談を活用した進め方にも対応しています。

初回のご相談は無料です。 ご来所による相談のほか、オンライン面談にも対応しています。

※本記事は一般的な制度・手続きの解説です(2026年9月時点)。負担金額・標準処理期間・関係法令の条番号等は変更されることがあります。承認申請は申請者本人または法定代理人が行う手続きであり、当法人は申請書類の作成・提出補助等をサポートします。境界確定・測量、税務、土地の売却が必要な場合は、それぞれ土地家屋調査士、税理士、グループ会社(株式会社ARIA Partners)等の宅地建物取引業者をご案内します。これらへの依頼は、それぞれの専門家との別個の契約となり、当法人の司法書士業務の受任条件とするものではありません。記載は執筆時点の法令に基づくもので、結果を保証しません。

この記事の執筆者
司法書士法人ARIAグループ 代表 川端祐也
保有資格司法書士・行政書士
専門分野相続
経歴1995年 和歌山県海草郡紀美野町で生まれる
2013年 関西大学法学部に入学
2017年 卒業と同時に司法書士試験の勉強開始
2019年 令和元年度司法書士試験に合格
2020年 大手司法書士法人に勤務
2021年 ARIA司法書士事務所を開業
2023年 司法書士法人ARIAグループを設立
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