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お墓・仏壇・位牌は誰が引き継ぐ?相続とは別のルールで決まる「祭祀承継」

2026.09.04

遺産分割の話し合いをしていて、ふと止まることがあります。

「でも、お墓はどうするの」

実家や預貯金の分け方は話し合えても、先祖代々のお墓や仏壇を誰が引き継ぐのかは、切り出しにくい話題です。 お金の問題だけではなく、誰が法要を主催するのか、誰が墓守をするのかという、家族の役割の話になるからです。

実はこれ、遺産分割とは別のルールで決まります。

お墓・仏壇・位牌は、遺産分割の対象にならないのが原則です

民法897条1項は、次のように定めています。

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

ここでいう三つは、次のものを指します。

  • 系譜……家系図や過去帳など
  • 祭具……仏壇、位牌、仏像、神棚など
  • 墳墓……墓石など。墓地の敷地や墓地の使用権についても、墳墓との関係や契約内容等に応じて祭祀財産として扱われることがあります

これらは祭祀財産と呼ばれ、相続財産とは別のルートで承継されます。

つまり、預貯金や不動産のように「相続人全員で分ける」ものではなく、原則として、一人の「祭祀を主宰すべき者」がまとめて引き継ぎます。 ただし、具体的な事情によっては例外的な扱いが問題となる場合もあります。

誰が承継するのかは、次の順番で決まります

1.亡くなった方の指定があれば、それに従います

被相続人が「この人に祭祀を主宰してほしい」と指定していた場合は、その指定に従います。指定の方法に決まった形式はありませんが、後の争いを避けるため、遺言書に書いておくことをおすすめします

なお、祭祀を主宰する人として指定できるのは、相続人に限りません。 相続人でない親族や、内縁の配偶者を指定することもできます。

2.指定がなければ、慣習に従います

その地方や家の慣習に従って、祭祀を主宰すべき者が決まります。

ただし現実には、「この地域ではこうする」と言えるほどの慣習がはっきりしないことが多いのが実情です。とくに大阪のように、各地から移り住んだご家庭が多い地域では、はっきりした慣習を認めにくい場面が少なくありません。

3.慣習が明らかでなければ、家庭裁判所が定めます

慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が承継すべき者を定めます(民法897条2項)。

家庭裁判所は、亡くなった方との身分関係だけでなく、生前の交流・同居の状況、これまで誰がお墓や仏壇を管理してきたか、墓地との距離、祭祀を主宰する意思や能力、親族の意見などを総合的に考慮します。長男だから自動的に、というものではありません。

なお、相続人間の話し合いだけで法律上の祭祀承継者が当然に決まるとは限りません。 実際の管理方法を家族で話し合っておくことは非常に重要ですが、法的な承継者を確定する必要がある場合には、家庭裁判所の手続が問題となります。

【重要】相続放棄をしても、お墓は引き継げます

ここは誤解の多いところです。

祭祀財産の承継は、相続とは別の制度です。そのため、

  • 相続放棄をした方でも、祭祀財産を承継することはできます
  • 逆に、財産を相続したからといって、当然にお墓を引き継ぐわけでもありません

「借金が多いので相続放棄するが、先祖のお墓だけは守りたい」というご希望は、制度上可能です。

承継しても、「墓を守る義務」が当然に生じるわけではありません

もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。

祭祀財産を承継したことだけを理由に、法律上、お墓を管理し続けたり法要を営んだりする積極的な義務が当然に生じるわけではありません。 また、民法897条には、祭祀にかかった費用を他の相続人が当然に法定相続分で負担するという規定はありません。

ただし、墓地の使用契約や管理規則に基づく管理料等の負担は別途確認が必要です。

つまり、承継した人が実質的に費用を抱え込むことになりがちです。

だからこそ、遺産分割の話し合いでは、

  • 誰が祭祀を主宰するのか
  • その人の負担を、遺産の分け方にどう反映させるのか

をあわせて話し合っておくことが大切です。相続人全員が合意すれば、将来の管理負担なども踏まえて遺産の配分を検討することはできます。ただし、祭祀承継者だからといって当然に多くの遺産を取得できるわけではありません。法律上の義務がない分、合意して書面に残しておく意味が大きいところです。

墓地の名義変更は、別途手続きが必要です

墓石そのものと、墓地を使う権利(永代使用権など)は別です。

寺院墓地や民営・公営霊園では、墓地を使用する権利の内容や承継手続が、管理者(寺院、霊園、自治体など)との使用契約や墓地使用規則等によって定められているのが一般的です。そのため、名義変更には管理規則に従った手続きと、手数料が必要になるのが一般的です。

必要な書類や手数料は管理者ごとに異なりますので、まずは墓地の管理者に確認してください。 使用規則で承継できる人の範囲が定められていることもあります。

大阪では、ご実家のお墓が遠方にあり、こちらから管理を続けるのが難しいというご相談も多くあります。その場合は、墓じまいや改葬、永代供養なども選択肢になりますが、いずれも墓地の管理規則の確認と、管理者との調整が前提になります。

税金の扱いについて

相続税法では、墓所、霊びょう、祭具など一定の財産は非課税財産とされています。ただし、民法上祭祀に関係する物であれば何でも一律に非課税になるわけではありません。 国税庁の通達では、商品、骨とう品等、投資の対象となるものは非課税の対象から除かれています。

この判断は税理士の業務ですので、当法人ではお答えできません。 該当しそうな場合は、税理士へのご相談をご案内します。

生前に買ったお墓の代金が未払いのまま亡くなった場合

相続税法13条3項は、非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引かない(債務控除の対象としない)と定めています。

これを受けて、相続税法基本通達13-6(墓碑の買入代金)は、次のように定めています。

被相続人の生存中に墓碑を買い入れ、その代金が未払であるような場合には、法第13条第3項本文の規定により、当該未払代金は債務として控除しないのであるから留意する。

また、墓碑及び墓地の買入費や、墓地の借入料は、葬式費用にも含まれません(同通達13-5)。

つまり、生前にお墓を用意した場合でも、その代金が未払いのまま相続が起きたときは、その未払代金は遺産総額から差し引けません。 「生前に買っておけば必ず得になる」とは限らない、というのはこの意味です。

取得の時期や支払状況等によって結論が異なることがあり、有利・不利の判断は税理士の業務ですので、当法人ではお答えできません。 該当しそうな場合は、税理士へのご相談をご案内します。

司法書士に相談するメリット

祭祀承継は、法律のルールと、家族の気持ちの両方が絡む場面です。

当法人では、次のような部分をお手伝いしています。

  • 祭祀を主宰する方を指定する遺言書の作成
  • 遺産分割の中で、祭祀の承継と負担をどう位置づけるかの整理
  • 合意内容を反映した遺産分割協議書の作成
  • 家庭裁判所に提出する書類の作成

なお、祭祀承継者の指定を求める手続きは家庭裁判所の手続であり、司法書士にはこの手続の代理権がありません。 当法人では、司法書士法に基づき家庭裁判所提出書類の作成をお手伝いします。親族間で主張が対立し、代理交渉や手続代理が必要な場合には、提携弁護士をご案内します。

よくあるご質問

Q. 長男が継ぐものだと思っていましたが、違いますか?
A. 長男が自動的に承継するという決まりはありません。 亡くなった方の指定があればそれに従い、なければ慣習、慣習が明らかでなければ家庭裁判所が定めます。

Q. 遠方に住んでいて、墓守ができません。断れますか?
A. 祭祀承継には、通常の相続のような「相続放棄」に相当する制度はありません。そのため、亡くなった方の指定や家庭裁判所の審判などによって祭祀承継者となった後に、単純に『承継しません』と放棄できる制度ではありません。

もっとも、祭祀承継者になったからといって、法律上、墓参りや法要を継続して行う義務が当然に課されるわけではありません。遠方に住んでいるなど管理が難しい場合には、墓地の管理規則を確認したうえで、墓じまいや改葬、永代供養などを検討することがあります。

Q. 相続放棄すると、お墓も手放さなければなりませんか?
A. いいえ。祭祀財産の承継は相続とは別の制度なので、相続放棄をしても引き継げます。

Q. お墓を継ぐ人に、多く財産を残せますか?
A. 遺言で祭祀承継者に多く財産を残すことは可能ですが、他の相続人に遺留分がある場合には配慮が必要です(遺留分に配慮した遺言の書き方)。一方、遺産分割の場合は、相続人全員が合意すれば、祭祀の負担などを考慮した分け方をすることもできます。

Q. 兄弟全員でお墓を共同で引き継ぐことはできますか?
A. 祭祀財産は、原則として一人の祭祀承継者が承継するものとされています。ただし、具体的な事情によっては例外的な扱いが問題となる場合もあります。実際の管理や費用を兄弟で分担すること自体は、話し合いで決めておくことができます。

Q. 仏壇や位牌を引き取る人がいません。
A. ご家族の事情によっては、対応を検討する必要があります。墓地の管理者や寺院への確認も含めて、現実的な選択肢を一緒に整理します。

まとめ・ご相談

  • 遺産分割の話し合いで、お墓のことが決まらない
  • 自分が継ぐことになりそうだが、負担が不安
  • 実家のお墓が遠方にあり、墓守ができない
  • 墓じまいや改葬を考えているが、何から手をつければよいか分からない
  • 遺言で、祭祀を主宰する人を決めておきたい

お墓の話は、切り出しにくいものです。 お金の話と違って、誰がどれだけ家と関わってきたかという、気持ちの部分に触れるからだと思います。

決められていない段階からご相談いただけます。 まずは、法律上どう決まるのかを整理するところから始めましょう。

司法書士法人ARIAグループ大阪オフィスは、大阪メトロ谷町線・都島駅4番出口から徒歩1分です。ご相談は、和歌山オフィス(JR和歌山駅東口から徒歩13分・駐車場1台分)でも同じ内容をお受けしています。ご都合のよい拠点をお選びください。 遠方にお住まいの場合や、お墓が遠方にある場合は、郵送やオンライン面談を活用した進め方にも対応しています。

初回のご相談は無料です。 ご来所による相談のほか、オンライン面談にも対応しています。

※本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。祭祀財産の範囲や承継者の判断は個別の事情によって異なり、最終的な判断は家庭裁判所が行います。税務判断が必要な場合は税理士、相続人間の交渉や紛争対応が必要な場合は提携弁護士をご案内します。これらへの依頼は、それぞれの専門家との別個の契約となり、司法書士業務の受任条件とするものではありません。記載は執筆時点の法令に基づくもので、結果を保証しません。

この記事の執筆者
司法書士法人ARIAグループ 代表 川端祐也
保有資格司法書士・行政書士
専門分野相続
経歴1995年 和歌山県海草郡紀美野町で生まれる
2013年 関西大学法学部に入学
2017年 卒業と同時に司法書士試験の勉強開始
2019年 令和元年度司法書士試験に合格
2020年 大手司法書士法人に勤務
2021年 ARIA司法書士事務所を開業
2023年 司法書士法人ARIAグループを設立
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